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「できる」しか言わない人

会話のキャッチボールができない

できない理由を説明するより、知りたいのはできる方法だと思います。けれど、できないことを想定して、別案を用意しておくことも計画には必要だということを私は「できる」しか言わない人に伝えたかったのです。
できない理由を説明するより、知りたいのはできる方法だと思います。けれど、できないことを想定して、別案を用意しておくことも計画には必要だということを私は「できる」しか言わない人に伝えたかったのです。

< ベトナム人A氏とのやりとり >

解決に苦しんでいたとある事案がありまして、前回、「父親のコネを使える」という提案を持ちかけたベトナム人と会って話をする機会を設けました。

 

自分がコンサルタントとしての駆け出しの時、ある先輩社員から「話し上手よりも、聞き上手であれ」と言われたことを覚えていますし、何十年も前に読んだ本で「相手の話をよく聞いて、相手が何を伝えたいかと理解して、相手に伝わるように話す」という一文があって感銘を受けたことを今でも覚えています。

 

あれから10年以上たち今の自分がどれぐらい高度なレベルで実演できているかはわかりませんが、少なくとも自分には姿勢があります。

 

 

 

たまに会話のキャッチボールができない人がいます。

ベトナム人にもいます。

今日の相手がそうでした。

 

まず解決に苦しんでいた事案について一部始終を説明しました。

この時、彼の中で「自分なら解決できる」という確信を得たようです。

 

これがどうにもこうにも くつがえ らず、 かたく ななのです。

 

いやいやいや・・・

 

自分とて手をこまねいていたわけではなく、思いつく限りの手立てを尽くしてきましたし、

どちらかというと自分のやり口は強引な方です。

できない理由を説明するよりも、できる方法を探せと常々自分にもスタッフにも言い聞かせています。

それで時間をかけてもダメだったのです。(予期せぬ新型コロナウイルス騒動が向かい風になったのもあります。)

 

正攻法ではダメだったから、”彼の父親のコネ”という裏技を期待したのですが、

正攻法に確固たる自信を持った彼は聞く耳を持たないどころか、

話が逸れて、逸れて、逸れて長引くばかりです・・・。

 

一旦、彼の話を さえぎ って自分の話を聞いてほしいと切り出しました。(この時点で聞き上手は諦めました。)

 

「Aさんは、このビジネスにおける実績があるし、専門家として詳しいのだと思います。けれど、私もこのビジネスのおける経験値はありますし、専門家なのです(本当は自分の方が詳しいと言いたかったのですが口をつぐみました)。今まであらゆる方法を試しましたができませんでした。正攻法でそれができるのであれば、もちろんそれが最高でありNo.1ですが、できなかったときの対策方法を一緒に考えてください。」と極めて優しい口調で話しました。

Yes. But会話法です。

 

コンサルの先生から、口で説明するだけでは伝わらないから、絵や図で説明しろという教えを受けているので、

絵や図を描きながら説明しました。

 

でも、彼はできる!できる!!できる!!!の一点張りなのです。

そして、どんどん話が脱線していきます。

ハノイ、フエ、ダナン、ホーチミン、カントー・・・なぜか地域が拡がっていきます。

 

また、私が さえぎ ります。

「できるという根拠は何ですか?」と尋ねると、

「自分は社長だからです」と誇らしげに言い切られました。

 

イヤイヤイヤ・・・

 

 

以下、私の心の声です。

「(あなたは 傀儡師 くぐつし か催眠術師かで、全ベトナム人の人心を掌握できるのか?)」

と言いたかったのですが、”相手に伝わる言葉で・・・”という本の教えに従い、言葉を和らげました。

 

私「もしAさんが神様で、この世界を作ったなら何でもできるだろうけど、私たちは人間です。できないことの方が多いと思いませんか?自分の努力だけでできることなら、AさんはAさん次第でできるでしょうが、今回は他人を巻き込んで実現させることなので、Aさんがどんなに立派な会社の社長でも”できないことがある”という考え方を持ってほしい。」と頼みました。

 

 

すると、Aさんは「神様は心の中にいます」と胸を押さえて熱く語り出そうとしたので、

私の心の声「(あぁ…、また論点がズレる)」と察し、

 

 

 

「もういいです!」と遮りました。

 

 

 

私とて正攻法できることを望んでいます。

でも、やろうと思えば計算式を立てられるほど確率として正攻法では難しいと数値で表せるのです。

そして、今まであらゆる方法を試してダメだった上で、A氏の「できる根拠」は説得力が無いのです。

 

解ってあげたいのですが、ガンバっても解らないのです。

 

だから、Aプラン(正攻法)がダメだったときのための、別案BブランやCプランを用意したかったのですが、

その話に展開させてもらえないのです。

 

 

 

自分の限界を垣間見ることができました。

タイムオーバーがきたということを理由(≒言い訳)とさせてください。

 

 

 

「彼と一緒に仕事はできないなぁ」というのが率直な感想でした。

 


< 論より証明 >

上記とは無関係で、ただ思い出したというだけなのですが、

以前いっしょに働いていたベトナム人スタッフにも頑固な男性がいました。

 

彼は、駐在員事務所であったときからマーケティング(市場調査)の仕事を1年半~2年ほどやっていました。

 

駐在員事務所をやめて、法人化する段階の時に、

私が送り込まれることになりました。

 

自分の役職は彼より上ですが、

経験・知識は彼に到底及ばないので彼を頼っていました。

 

けれど、自分の役割は売り上げをあげることで、そのためには営業活動が必要で、新規開拓をしなければならないので、

そこは手綱を握ってできることはすべてやろうと意気込んでいました。

 

受入れてくれていなかったわけではないのでしょうが、

早い段階で彼と衝突します。

 

私は見込み顧客をすべて調べて、そこへすべて訪問しようと思ったので、

「見込み顧客リスト」の作成を彼に指示を出しました。(指示といっても、提案やお願いに近い優しい口調です。)

 

そうすると、彼から拙いリストを渡されました。

 

私「他にないの?」

彼「ないです。」

 

・・・。

 

私「いや、でもこれ日付が1年前だよ?増えているかもしれないでしょ?」

彼「私はこの仕事をずっとやっていました。ベトナムで私が知らない会社はありません!

と叫んだので、自分でやってみることにしました。

 

この製品の知識はありませんが、

この製品が使われる用途・材料の供給先・同業者・工業団地の管理会社などなど・・・

 

名前が挙がったところにはすべて電話をかけてアポを取り、訪問して来ました。

(彼も連れて行きました。そういうのは逆らいません。)

 

ビジネスマンとビジネスマンが話し合えば、

大概は新しいビジネスの情報が得られて、それを共有することができます。

最新情報にアップデートすることもできます。

次に繋がります。

 

結果的に、私は彼のリストにはなかった日系企業・外資系・ローカル企業を次々に見つけて、

見積もり依頼や受注を得ることに漕ぎつけました。

 

 

「(どうだ恐れ入ったか!?)」と発言してしまうと、

彼のプライドを傷つけることになるので言いませんでしたが、

彼が後輩である私へこの業界や製品知識のことで威張ることはなくなったので、

ひれ伏したのでしょう。

 

論より証拠だと思いますが、

論で察してくれる相手の方が有難いです。