事業再構築補助金申請用事業計画書の作り方

 中小企業向けの支援策としてはかつてない1社あたりの補助金上限金額(最大1億円)と予算配分(1兆1,485億円)を設けられ、当事者及び関係者等は色めき立ちました。ところが蓋を開けてみると、コロナ対策関連は採択率60%だったものの、通常枠等の採択率は30%台とやたら面倒くさい申請方法を敷いた割にはその努力の大半を無下にする酷い結果となりました。

 できるだけこれ以上の不幸が生まれぬよう当社が引き受け、クライアントさんを通常枠で採択できた事業計画書の作り方をお伝えします。

令和2年度第3次補正予算「中小企業等事業再構築促進事業」

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詳しくは日本政府経済産業省のホームページを熟読して頂くとして、ざっくり解説します。

 

<注意点>

 

  • Max1億円とはいいつつ、一般的な中小企業・零細企業・個人事業主のMaxは6,000万円です。
  • 大前提として「売上減少要件」があるので、それは必ず確認した上で進めてください。
  • 補助金額3,000万円以上の申請を目指す場合は、金融機関(銀行や信金等)の協力が不可欠です。3,000万円以下でも認定経営革新等支援機関の協力が必須です。無料で済ますのであれば該当地域の都道府県等中小企業支援センターや会員になっているのならば商工会議所や商工会に持ち込むのがよろしいかと思います。個人的な実体験として銀行は「金融機関の確認書の押印」は頼めても「事業計画書の作成」はまったく協力してくれませんでした。
  • 見落とされがちですが「事前着手申請」という制度があるので、2021(令和3)年2月15日以降の購入した機材・物品等についても対象に含めることができる方法があります。但し、第1回目と第2回目は大丈夫でしたが、第3回目以降は不確かで、申請が必要であり必ず認められるとは限りません。
  • 事業計画書策定において「売上要件」や「付加価値額要件または一人当たりの付加化価値額要件」等、実際に実行できずとも"計画書上はそうでなくてはならない"条件が定められていますので、必ず定めに忠実な事業計画書を作らなくてはなりません。

事業計画書の作り方(15ページ用)


<1ページ目:事業背景と事業概略と要件該当主張>

 

新聞が一面に最も注力しているように、ここで伝えたいことの粗方を記載します。

 

「想い」は大事ですが、想いをダラダラと述べられるのも鬱陶しいです。後半に入るほど相手の考えとの相違が生じやすくなります。想いを伝えるのなら、「冒頭に、簡潔に。」です。

 

客観的な情報として、新聞・大衆誌・著名な論文等に取り上げられた掲載を画像化すると良いでしょう。

 

さらにマクロ環境・ミクロ環境、これまでの自社ビジネスと新たな事業のことを簡潔に述べます。

 

最後に、申請する事業が要件に則っていることをPRします。

 

「新分野展開」の要件 対応状況
製品等の新規性要件 ①過去に製造等した実績がないこと 過去に開発したことがない新規サービスである
②製造等に用いる主要な設備を変更すること 新しく専用の●●を構築するため、●●投資が必要
③定量的に性能又は効能が異なること 原則対面で行う●●ビジネスと、●●サービスである▲▲▲▲は提供されるサービス内容(価値の種類)が大きく異なる
市場の
新規性要件
既存製品等と新製品等の代替性が低いこと ▲▲▲▲は課題の可視化ツールであり、課題解決に焦点を当てた◯◯とは異なるため、既存事業の売上高が減少するといった影響は見込まれない
売上高
構成比要件
3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定すること 3年後、▲▲▲▲事業が、当社における売上高が総売上高の10%以上となる計画となっている
※詳細は収益計画を参照のこと

 

 ※極力すべて1ページにまとめます。


現状整理のためのSWOT分析は結論ありきの場合、都合の良い情報で埋め合わせがち
現状整理のためのSWOT分析は結論ありきの場合、都合の良い情報で埋め合わせがち

<2ページ目:SWOT分析>

 

コンサルタントは大好きで、それに反比例するかのように煙たがるような人たちがいるのを知った上で、今回は公募要領にも記述されているので書かざるを得ないと考えます。

 

注力すべきは強み×機会。

 

おざなりにしてもいいですが、コツとしては弱みと脅威についてもその対応策をさらっと書いておくと良いでしょう。

 

本来の戦略策定は現状分析から組み立てて結論を出すものなのですが、補助金申請のためのSWOT分析は結論(=この事業を行う)ありきで都合のよい情報をかき集めるます。

 

もちろん、そこから新たな気づきが得られることもありますが、都合の悪い情報が出た時は隠しがちです・・・。

それを審査員へ如何に隠すのか、そして隠さずバレたときの為の言い訳をどう記述するのか。

 

また、市場分析を行ったというPRとして公募要領にも記載された「グラレスタ」の図表をなるべく載せた方が良いです。

(※ベトナムからは見れませんでしたが・・・)

グラレスタの情報が不利な情報だったとしても、その不利な状況下でどういった手段を取るか(差別化・独創性)と反面教師として使用できます。

 

補助金申請の攻防戦には表現力・作文力が求められます。


出処:「企画書は、手書き1枚」Author高橋亘行
出処:「企画書は、手書き1枚」Author高橋亘行

<3・4・5ページ目:市場ニーズ、ターゲット市場、ポジショニング、コンセプト(≒全体戦略)、マーケティング4Pの各戦術、定性目標・定量目標、具体的見込顧客先、具体的競合先>

 

補助金の申請をしようと思う時点で、どの事業を行うか決まっていることがほとんどかと思います。

 

なので、結論ありきだと矢印が逆になります。 

  • 社会や時代の空気はこういうものだと もっと もらしく説明
  • 依頼主の方針・要望をあたかも存在するかのように説明
  • 顧客(≒消費者)の関心事を客観的に見せることを忘れず、主観的かつ自社にとって都合よい部分を切り取って説明

ただし、注意しなくてはならぬはここへの尽力を怠ったがために過去の採択率が低いという結果になりました。

 

綿密なマーケティングを行なって大成功した起業家が審査員にいるわけもなく、懐の大きい経営者ほど「(失敗するだろうけど将来への期待を込めて)やってみればいい」と言いそうな中、審査員へ もっと もらしい情報を提示しなくてはなりません。

 

  1. メインターゲットとその数
  2. 単価と頻度
  3. 時期的変化
  4. 競合他社の動向
  5. 代替品・代替サービス登場のリスク
  6. 利益額とその推移・・・

「それが解ったらこんな面倒くさい国の補助金申請せずとも自己資金か、エンジェル投資家やクラウディングファンドで資金を集めて成功させてるわ!」

 

と、ブチ切れたくなる感情を抑えて、 もっと もらしい説明をしなくてはなりません。

 

これが最も大変であり、完璧がない上に、どれほどの労力と時間をかけるべきものなのか判らぬのが厄介です。

 

本来ならマーケティングはマーケティング生業とする業者の専門分野であり、

中小企業はもちろん、認定経営革新等支援機関とてそれができるところはほとんどありません。

できてたら、大成功を収めた起業家として名を馳せているはずです。

 

完全でないができるだけのことはやる

(※その加減が解らぬのが厄介)

補足:ポジショニングについて

事務局が公式にYoutubeへあげている動画によると、ポジショニングは「競合他社や顧客ニーズに対してどういう位置取りを取るか

」だけでなく、「今までの自社事業の位置と新たに取り組む事業との比較」が求められているようです。



<6・7ページ目:経営資源(ヒト)>

 

今回、新たに取り組む事業(以下、補助事業)の実施体制を記述します。

 

コツとしては、雇用の創出です。

 

コロナ前に人手不足で悩まされている業界が多かった中で、どう雇用を創出するのか現実的には悩ましく、当社的には外国人雇用と結び付けたいところですが、そこまで細かくする必要もないかと思います。


この時点での金額は概算で構いません。
この時点での金額は概算で構いません。

<6・7ページ目:経営資源(モノ・情報)>

 

補助事業で購入する際の物品リストや広告宣伝費等を表にまとめる良いでしょう。

 

機械装置・システム構築費については補助金をあてにするものと、"補助金の対象外であるけれど事業には使用するもの"とに分かれますが、労を惜しまないのであれば全て掲載すべきだと思います。

 

当社が請け負った案件では、すべて記載してなくても説明が付くと判断して、補助金対象のみを記載しました。

 

1つ1つに番号を振って、どういうものか、どのように使うかを簡潔に説明しています。

 

注意点として「研修費」については

  1. 研修名
  2. 研修実施主体
  3. 研修内容
  4. 研修受講費
  5. 研修受講者名

の記載が必須ですのでお気をつけて。


収益計画は1円単位で作って最後にExcel機能で千円単位に変えると後々功を奏することになります。
収益計画は1円単位で作って最後にExcel機能で千円単位に変えると後々功を奏することになります。

<8~12ページ目:経営資源(カネ)>

 

収益計画を作ります。

 

補助事業が全体の売上高に占める割合条件や付加価値額条件等がありますので、公募要領に定められた条件をクリアする数値目標を立てなくてはなりません。

 

また、付加価値額を計算する際「人件費」の項目を説明する必要があります。

直前期と前々期の決算書をもとに、人件費の項目をすべて記載しておくと良いでしょう。

《参考:収益計画書》

【全事業】

単位:円(※従業員数のみ 単位:人)

 

前々期

直前期

補助事業終了年度

1年後

2年後

3年後

4年後

5年後

売上高(対前年度伸び率)

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売上総利益(売上高総利益率)

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営業利益(売上高営業利益率)

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経常利益(売上高経常利益率)

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人件費1[労務費] (対前年度伸び率)

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人件費2[給与手当]

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人件費3[法定福利費]

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人件費4[福利厚生費]

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人件費5[中退協掛金]

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減価償却費1[売上原価]

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減価償却費2[販管費]

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付加価値額(対前年度伸び率)

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一人当たりの付加価値額(対前年度伸び率)

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従業員数(対前年度伸び率)

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 ※小数点以下四捨五入

【補助事業】

単位:円

 

前々期

直前期

補助事業終了年度

1年後

2年後

3年後

4年後

5年後

補助事業売上高(対前年度伸び率)

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全体売上高に対する補助事業の売上が占める割合

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 ※小数点以下四捨五入

【総製造費用内訳】

単位:円

 

前々期

直前期

補助事業終了年度

1年後

2年後

3年後

4年後

5年後

材料費(対前年度伸び率)

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労務費(対前年度伸び率)

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外注加工費(対前年度伸び率)

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製造経費(対前年度伸び率)

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総製造費用(対前年度伸び率)

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※小数点以下四捨五入

【売上総利益算出内訳】

単位:円

 

前々期

直前期

補助事業終了年度

1年後

2年後

3年後

4年後

5年後

売上高

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0

 

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0

 

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総製造費用(対前年増加率)

0

(-%)

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0

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期首仕掛品高

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0

 

0

 

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0

 

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期末仕掛品高

0

 

0

 

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売上総利益(対前年増加率)

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※小数点以下四捨五入

「収益計画表」のみであればA4用紙を横向きにすれば多少の縮小は必要なものの文字が読める程度の大きさで収まります。(8ページ目)

 

残り4ページ(9~12ページ)で収益計画表の「算出根拠」を説明します。

事細かに説明するとキリがなく、ページ数も足らなくなるため、「都合上」「便宜上」という文言を用いて省略または簡素化を図ります。

 

最も注力すべきは、売上高の積算根拠です。

そして、これが(上述)市場規模と同じで非常に厄介です。

 

新規事業です。

コンビニのように天候や近隣のイベント等、さまざまデータを持った上で経験則で予想するのとは異なります。

誰がコロナを予想したのか?それができなかったから皆が苦労しているのではなかろうか??

今回の補助金申請要件である売上減少が起こったのではなかろうか???

 

匙を投げたくなる気持ちをぐっとこらえて、出来る限り精一杯取り組みましょう。

 

そうとしか言えません。


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