ホーチミンで飲食店を営むある日本人店主さんとは会うといつも雑談を交わす仲で、その店主さんには二回りぐらい年下のベトナム人彼女がいる。
我々の雑談はこちらから話題を持ち掛けることもあれば、店主さんから起こった出来事を話してくれることもある。
「そういえば、この頃彼女が登場してこないな」と、ふと気づき、そのことを店主さんに尋ねてみた。
すると、「お食事中ですがよろしいですか?」というので汚い話だったら嫌だなと思ったが、そうではなく、長くなるというだけだったので一部始終を聞いた。
彼女はずっと彼女の実家に帰っているとのことだった。
理由は、彼女の妹が見知らぬ外国人が飲食店を始める際に名義を貸したのだが、そのお店は閉店してしまった。しかし、払わなくてはならない税金が未納のまま行方不明になってしまったため、支払い請求が彼女の妹のところに届いたとのことだった。
金額は40,000,000VND(約24万円)ぐらい。
ちなみに、今は外国人でもベトナムで飲食店オーナーになれるよう法改正がなされたのだが、かつては認められておらず、外国人が飲食店を作るにはベトナム人から名義を借りるしかなかった。
外国人投資会社とローカル会社では規制がぜんぜん違うので今でも名義を借りるという手法はしばしば行われているはず。
多くはコンサル会社などが仲介し、名義貸しをした本人(ベトナム人)の乗っ取り等を防ぐため、名義貸しした者は名義貸し料を受け取るものの、どの店(会社)なのかといった情報は伝えられないらしい。
ただ、今回のようなトラブルは初めて聞いた。
もしかしたら、自分が知らないだけで多いのかもしれない。
名義貸しで甘い汁を吸った妹も悪いが、仲介業者もお粗末な仕事ぶりだ。
その妹に請求をされたお金をなぜか姉が返すために借金をして、今は実家の近くで仕事をしているのだそうだ。
この話を聞いてまず思ったのは、ホーチミンに出来稼ぎで来ていた人が故郷に戻ってお金を返しているというのが不可解。
金融業者が斡旋した水商売で働かされているのだろか?
ちなみに、この彼女はホーチミンでは昼間の仕事(保険関係)をしつつ、以前はホーチミンの日系カウンターバーでも働いていたのだが、退職時に店のマネージャー(ベトナム人女性)ともめて、そのマネジャーが彼女の父親に通報した。
「あなたの娘はカウンタバーで働き、〇〇行為を行なっている」と。
それを聞いた彼女の父親は荒れ狂い、一旦、避難したら避難先に押しかけた父親が暴れたそうだ。こうして、しばらく彼女は軟禁されたという経緯がある。
だから、実家近くの水商売で働くことなどできなそうだが、背に腹は代えられないのだろうか?
もう1つ不可解なのは、彼女がカウンターバーで働いていた理由は「妹夫婦」を養うためだったそう。
今回の件もそうだが、なぜ姉が面倒を見なくてはならないのか?妹夫婦はなぜ自立した生活を営めないのか?
色々な家庭の事情はあるのだろうが謎として残る。
こういう時、だいたいベトナム人女性の発想だと、恋人である日本人店主さんに「お金を貸してくれ」と言ってきそうなパターンだが、それは今のところないそうだ。
それが良いことなのか、寂しいのか・・・と悲しそうに笑いながら店主さんはお客さんが来たので厨房に戻っていった。
(※つまり、彼女が実家に戻ってから2か月ほど経ち、会えていなかったのと、電話会社との契約トラブルで音信不通だった間が1か月ほどあったので、この頃話題にあがらなかったと判明した。)
この聞いた話を考えながら歩いて自宅アパートに戻る途中、近所の薬局が何やらキャンペーンをやっているようで、風船をもらった。
もらう方ももらう方だが、あげる方もあげる方だ。
成人男性がもらって喜ぶものではないとわかるだろうに。
子供がいるとでも思ってくれたのだろうか?
こういうもらい物はお世話になっているアパートのスタッフさん(4才の息子がいる)にあげるのだが、彼女はバイク通勤なので風船は邪魔だろうなと思った。
もう一人のスタッフさん(12才?の子供がいる)にあげようかなと考えていたら、エントランスのドアを開けたらちょうどその人がいたので、プレゼントだと伝えて渡した。
ヘリウムガスが入って浮くタイプではなく、空気を入れて膨らませたただの風船。
こんなものもらっても嬉しくないだろうなと後ろめたい気持ちはある。
あげる方もあげる方だ。
同罪。